2021年2月27日
71BコンパチC Ω33クロス 「魔法の箒#7」
魔法の箒シリーズの#7となります。魔法の箒の詳細は 魔法の箒#1 こちら
S20エンジンのハコスカGTRのオーナー様からこのセットで組んでほしいと依頼されました。
左上はS20エンジン系の人ならすぐにわかるS20エンジン用ケンメリ2分割復刻版のベルハウジングです。このベルは最近にも取り扱いましたが、初期から比べると品質感がかなり向上しています。
中央部は純正メインシャフト
左下はカメアリ2-3Wシンクロクロスギヤ
右下は純正ハイギヤードインプットシャフト
全て新品です。
オーナー様からドナーとしてDR30のミッションを支給されました。ミッション的には1-2速は大径シンクロですがダブルシンクロではなく、さらにシンクロ舳先がストレート(私のα、Ωは舳先がギヤ抜け防止テーパー付きを使います)なので今回はカメアリクロスにするのでどちらにしても使いません。
3-4速は小径ギヤ&シンクロですのでΩには使いません。3速はカメアリダブルシンクロに交換なので良いですが、4速メインインプットは使えません。(他のバージョンなら流用は可能)したがってハブスリーブもすべて流用できませんが、リヤ側の5速とバックはそのままで行けそうです。
フロント側の部品たち
左上 ハブスリーブも新品にしてゆきます。手前側はカメアリクロスのギヤとカウンター
後はシンクロとベアリング
1-2速ハブスリーブをアッシーしたところ
71C用はこのように巨大です。
ドナーのDR30用のメインインプットが小径シンクロでしかも薄刃だったのでΩの場合は使えないので新品のメインインプットセットを準備します。
メインインプットについて組み込んだ後、画像のシザースギヤ=ギヤチャタリング音軽減装置を取り付けます。S20エンジンの場合アイドリング時ガチャガチャするチャタリング音が激しいときが有り、この装置をつけることでそれを低減できます。
フロント側が組めました。以前のDR用とはだいぶ異なるところが良くわかると思います。
リヤ側の組み付けに入っています。5速ギヤはDR用の0.83をそのまま流用してゆきます。が、M38ナットの前、5速裏には私の考えた「5速裏スラスト」ニードルベアリングを構築します。
Ω、α、βともに5速のギヤ比は0.75、0.83、0.86(ポルシェ)から選択できます。
今回は高回転型のS20エンジンですので0.83の選択とします。
カウンターの後ろ側のベアリングはカウンター軸折れに強いニードルベアリング
ギヤ部完成で測定に入ります。
最近この時点でのギヤ精度測定をより正確にするため画像のような精密ダミーテンプレートでミッションケースに入れた時と同じ状態にして測定しています。日産整備解説書ではフロント部分をそのままフリーにして測れと指示されていますが、どうも慣れないと不確実なのでこのイーザ方式特殊測定治具を作りました。
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
エンドプレイ
0.31 0.18 0.23ーーー0.24
バックラッシュ
0.13 0.18 0.16ーーー0.10
3RDのエンドプレイが大きめですがカメアリクロスの場合大抵こうなり、その設定だと思うのでよろしいかと思います。(71C標準では0.18くらい 規格は0.19まで)
シフトリンケージ・シフトフォークを組んだ。
フロント側が71c リヤ側がDR という感じである。
この部分にあるオイルガターという部品は千切れやすいので補強しています。リヤのスプラインのプレーンガイドへオイルを運ぶ役目をしています。
純正ケース
復刻版
鋳肌がきれいだしリブもしっかりできています。
純正ケース
復刻版 全く差が無いように見えます。
以前はボルト穴の座繰りが胴体に食い込んでいて荒く見た目がかなり悪かったんですが、完全に修正されています。
純正ケース
復刻版 以前のはここの中のベアリング取り付け面がフロント側に寄りすぎていて切削面がかなり異なっていたのですが、今回は完全に修正されています。
もはや純正品だけにあるものはこの鋳出しのマークだけと言っても良いくらいで、品質感はむしろ復刻版の方が上回っているのではないかと思えるほどです。
特に顕著なのは純正品にある鋳型の分割ラインが復刻品にはほとんどありませんし、形状も瓜二つでどうやって形状を採取して製作したのかこれについては私には見当もつかないです。何らかの方法でロストワックスを製造する型を作り上げたのではないかぐらいしか想像できません。
ここも純正にしかないマークと製造番号と思われる刻印となります。
シフトブロックについてはDRを流用しますが少し問題発生です。中央のオイルシールが欠品なのです。しかもこのリップシールタイプのオイルシールは完全に設計ミスでスライド部分に使うとリップが裏返ってすぐに摩耗してオイルだだ漏れとなります。
このシールに関して、71Bの初期の設計はオーリングを金属冠で打ち込み固定する方式で、ストライキングロッドがφ14の時代です。その後、φ14ストライキングロッドでもリップシールタイプが出てきました。さらにその後DRの時代からストライキングロッドがφ16となりこの時からすべてリップシールタイプとなりました。 ロッドがφ16になった理由はおそらくシフト左右の操作を強引に力任せにやる人がいてロッドを捻じ曲げたためだと思います。 シールとしてφ14用オーリング金属冠式部品は何故か今でも部販で買えますが、φ16のリップシールは出てきません。
そこでこのようにします。φ16のオーリングを汎用品から探し出します。そしていままで使っていたφ16用のリップシールのリップを全部削り取って外周の金属リングだけにしてその中にφ16オイルシールを入れてからブロックに打ち込みます。つまりφ14オーリング+金属冠タイプのφ16版を作るということです。これで部品入手とオーリング化対策の1石2鳥です。
打ち込みました
フロントカバーはアルミ製新品、ピボットはニスモを使います。
プロペラシャフトのオーバーホールと
イーザ方式クイックシフトも同時に製作
クイックシフトはオーナー様のご要望でレバーが少し手前になるように角度調整しています。
左側のシフトレバーの丸穴支点から先端のぐりぐりの距離の差がクイック量となります。
上がクイックシフト
下が純正です。
S20エンジンの魔法の箒#7
完成です。
2021年12月21日
Ω33のオーナー様からスペアとしてもう一台製作したいというご要望があり、素材となる今まで使っていたミッションを分解して確認します。
フロントケースはいわゆるケンメリ2分割の純正S20用ミッションです。
フロントカバー アルミ製です。
ミッションの中身です。全体としてはポルシェシンクロでプロペラシャフトがスプライン差し込み方式となっている71Bとしては後期のポルシェシンクロミッションです。
見てすぐにわかるのですがカウンターの1速が明らかに外径が大きく、歯数が16という特徴的な240クロスパターンのギヤ組です。シンクロCリングはまだ金属地肌が出るところまでは行っていないですが摩耗は有ります。
リヤ側の5速とバックです。71Bポルシェはみんな同じギヤ比0.86でできているはずです。(歯数までは数えていません)
1速ー2速のシフトフォーク
左側=2速側が少し摩耗して隙間が見えます。
3速ー4速側ですが大きく摩耗しています。
特に4速側
同じ4速側の反対側を見るとその摩耗はもっとひどく、ここから見てもポルシェのシフトフォークが平行に押せていない現象がはっきりと見て取れます。