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71BコンパチC Ωバージョンは71Bミッションの中身を71系最終バージョンの71Cに入れ替えて性能回復を図るバージョンです。Ωバージョンは純正でも存在しない4速まで強烈なシンクロのかかるダブルシンクロとするバージョンです。バージョンとしてΩ、α、β、γ各バージョン×クロス組バージョンが有ります。

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2023年10月31日

71BコンパチC Ω56クロス

今回は画像のようにすでに釜替え71Cになっているミッションをクロスギヤ組で4速ダブルシンクロのΩバージョン、5速ギヤ比0.83への変更(現状は0、75)を長野のS30Z乗りさんにご依頼されました。

費用をかけたくないという事でなるべく現状を使って欲しいという事でしたが、さてどうなるでしょうか?

分解する前にすでにこの時点でメインインプットが異常に首振りします。こんなに首を振ったらもう間違いなくベアリングは再使用は難しいと思います。

ミッション中身を取り出しました。

ミッションとしてはR32タイプMのバックリンク仕様のミッションです。

この後シフトフォーク・ロッドを取り外してギヤセットだけにして精度を確認します。

ギヤ精度

 

エンドプレイ

0.43 0.25 0.30 ーーー 0.26

バックラッシュ

0.21 0.23 0.25 ーーー 0.30

 

全体的に値が大きく規格のアッパーを外れているところが多いですので、このギヤセットは相当摩耗しているといっていいと思います。

目視で見てもギヤの歯面がテカテカに光って研磨痕さえなくなっています。私もここまでギヤ歯がテカテカなのは見たことが無いです。相当高負荷でかなりの時間使われていると思います。

今回はクロスギヤに変更するので1-3速、カウンターギヤは亀有クロスの新品となります。

5速は0.83ギヤ比への変更を言われているのでこれも交換になります。

残るは一番大事なメインインプットという事になりますが、どうしましょう?このままでも大きな問題はないかもしれませんができたら交換したいところです。

 

最初にも述べましたがベアリングが完全に確信できるほど摩耗してがたがたです。という事はこれ以外のボールベアリングは特に変えてない限り同じように限界でしょう。またニードルベアリングも同じく摩耗しているはずです。通常のΩバージョンなら無条件ですべて交換してしまいますが、今回は基本交換しないという選択ですのでどうするか相談しなければなりません。

これから分解してゆきますが、シンクロリングについても同じく途中で交換してないなら流用はかなり冒険です。通常のΩバージョンならこれも無条件で交換です。

オーナー様とご相談の上、Ωバージョンでなるべく新品パーツに交換してゆき、亀有クロス組で行くことで仕様変更となりました。

必要なパーツを集めています。

 JCCAへの参加を計画しているという事で、サーキットでのバトルに耐えれる仕様での改造となります。メインシャフト・亀有クロス・5速0,83ギヤ比等パーツを揃えます。

これだけ集めるとほとんどが新品パーツで交換されることになります。

メインシャフト

1-3速クロスギヤ

0.83ギヤ比5速

シンクロ

ボールベアリング

ニードルベアリング

等です

メインインプットの消耗もひどかったので結局新品で交換することにします。Ωバージョンですので4速メインインプットもダブルシンクロとしてゆきます。これは71CのR32やSR13・14・15でも存在しない仕様となります。

メインインプットの中にあるニードルベアリングは画像右側の物からその左横のかなり頑丈そうに見えるパーツに交換して行きます。

1-4速まで組みました。

しかしここで問題発生。

回転が芳しくありません。

 

いろいろ調べたらこのシザースギヤというメインインプットのところにあるパーツがなんか変であることに気が付きました。左が今までついていたもの、右がいつも使っているものです。

重ね合わせてみるとこれだけ差が有り、今までついていたものは3mmほど径が大きいです。

これで ハタと気が付きましたがこれは21ー32ギヤ比といういわゆるローギヤッドメインインプット用のパーツです。すぐに今までのメインインプットを調べたらやっぱり間違いなくローギヤッドメインインプットで、これでは1速が3,5から始まるセダン用のギヤ比で在ったことになります。このギヤ比はR32ではなかなかないので、まったく気にしませんでしたがこんなこともあるんですね。

これから交換するメインインプットは22-31という完全スポーツバージョンのギヤ比に交換となります。気が付いて良かった。

リヤ側も組んでいきますが、今回ご要望で71Cの純正の5速ギヤ比0.75からスポーツ仕様の0,83ギヤ比に変更してほしいという事で私のやっているオプション組で0,83ギヤ比にしてゆきます。通常、71Cは殆んどの個体が5速は高速クルージング用で0.75ギヤ比ですが、私はサーキット走行を通じてスポーツ走行では0.75ギヤ比では4速の1.00からは少し離れすぎて無理があるという認識です。一般道や高速ではまた別の話ですが。そこでオプションの0.83ギヤ比を編み出したわけです。

画像はカウンターリヤベアリングですが左のニードルベアリングタイプのほうが強度が有るので交換です。

ギヤ組が完了しました。

ギヤ精度

 1ST  2ND  3RD      5TH

エンドプレイ

0.35 0.12 0.13 ーーー 0.25

バックラッシュ

0.17 0.21 0.25 ーーー 0.07

良い値となりました。

M38ナットはサイドロックボルトで完全な緩み止めを行います。

シフトフォークを組みました。

5-BはR32タイプの仕様であるバックリンクタイプとなっています。

ギヤ組が完成したので元どうり釜替え71cのケースに組んでいきましたが、完了後メインシャフトを回すとものすごい回転抵抗で手では回せないほど重くなってしまいました。こりゃ私のギヤ組をどこかで間違えたかなと真っ青になって焦りまくったのですが、仕方ないのでもう一度分解しました。いろいろ調べて行ってやっとその原因がわかりました。

金属棒で指している部分はフロントケースのカウンター側ですが、フロント釜替え71cではこの部分にシザースギヤが干渉するので逃がし加工をするのは当然のことで、多くの釜替え仕様の説明でもここを追加工すべしとたくさんの媒体で説明されているのですが、この個体では加工してあるのは間違いなく痕跡が見られたので、もう対応加工はしてるなという判断でした。しかもこの状態で今まで使用していたのですからこの部分については疑いもしなかったのですが、結果的にはこの部分の逃がし加工不足でカウンターベアリングのシザースギヤががっちりと干渉している状態でした。不思議なのはこれでは回転が重くなり、回転抵抗はものすごくきつくなり、ギヤシフトも苦しかったはずなのですが良く今まで使用できていたなという疑問です。自分としても先入観で物を見てはいかんなという良い勉強になりました。

 ところで釜替え71cが流行り出した20年くらい前の記憶では今回問題になったカウンターベアリング前のケース加工は最低でも3mm以上全面を追加工せなあかんという情報が最も多かったと思います。そのため実物を見ると多く場合はフロントケースのカウンター側の凸模様が消えるまで削り込んでいる場合がほとんどだったと思います。私がコンパチcを編み出すときにこの部分はCADで設計図を起こしてどれくらい逃がし加工をすればよいか検証をしたのですが、3mm削り込めや凸形状が消えるまで全面削れなどのウェブ上に散見される情報はすべて都市伝説(=勘違い)にすぎないことを確証しました。私はそれよりももっと確実にエコに干渉を逃がす方法を考え出していますので、コンパチミッションはすべてそのセオリーでここの部分を対処しています。

それなら今回ももっと早く気が付けよですよね。先入観って恐ろし。

ちょっと話が変わりますが、これはフロント釜替え71cに使われる71cのリヤエクステンションですが外観はリブだらけで大きさも大きくなっているのでさぞかし強度アップされているんだろうなと思うかもしれませんが、分解してこちら側から見ると壁厚みや接合部の幅は71Bと比べると比べるまでもなく貧弱に出来ています。私の想像ですがギヤ歯厚UPやシフトフォークの大型化による重量増を、71Bに比べて大きな重量UPにならないようにこういうところで軽量化を図っているのだと思います。強度的に問題になったことは無いのでこれでもよろしいのだと思います。メーカーとしてもアルミ重量を減らせて原価低減になっていることと思います。

 

 今回はすでに釜替え71Cでセットアップしてしまっているのでという事でこのまま釜替えで組み戻しますが、

実際は

・ミッションメンバーがオフセット形状にした専用パーツを使う必要が有る。(車検時はチェックされる危険)

・シフトレバーの取り出し位置が変化してしまう

・シフトストライキングが2段重ねになるのでシフトのダイレクト感が希薄になる

・ミッション外観が71Bと異なり、比較するとかなり違和感が残ります。

等不都合なことをかなり抱えることになります。

20年前はこれしかできなかったので仕方ないですが、私の作り出したコンパチCが使える現在では

よくよく選択を考えたほうがよろしいかと思います。

何とかケースを加工して組み戻しました。今回は組み換えだけだと簡単に考えていたのですがやはり一筋縄ではいかないです。

ミッションとしては一次減速ローギヤッドのセダン用ギヤ比から脱却できたし、ミッション内部の干渉によるパワーの無駄使い(結果的にギヤやベアリングの異常摩耗)からも逃げられると思います。

今回はチューニングというよりはマイナス要因からの脱却でしたね。

 

ご要望で71Cのクィックチェンジも準備します。モノとしては中古ですがものすごくクィックになります。