2013年5月10日

 

FS5C71A三分割ミッションの中身

2013年4月29日

FS5C71Aは71系としては最初期のミッションで、ケースが3分割されているので外観で違いがわかりますが、L型エンジンやS20エンジンは初期はこれが使われていますね。

 このミッションは壊れやすいことで有名ですが、やはり想定エンジン馬力が低いところにあるので仕方の無いところなんでしょう。

 外観は後の2分割71Bとある程度似ています。今回分解チェック可能な個体が入手できたので調べてみます。

これが被験者の個体です。240クロスと言うことです。シフトレバー取り付け部が前がかりになっているのは、ハコスカ用の特徴のようです。

 後部のフランジはインパクトで無いと外すのが大変です。アダプタープレートは紙パッキンが使われていますので組み立て時は何とかそれを入手するか、作るかしなければなりません。71Bはここが液体パッキンのみで組み立てられます。

ストライキングレバーですが、71Bとくらべれば非常に華奢にできています。これではやはりかなりのたわみが発生していたと思います。ただ左側のストライキングレバー比が異常に長いので、左右のふり幅はかなりタイトであったと思います。逆に言えば左右がどの位置にあるかわかりにくいと言うことになります。

 

これではかなり鋭敏な左手の持ち主でないと1-3-5の横方向位置を間違えることが起こりがちですね。

ここがフランジタイプと言われるところの中身ですが、71Bに比べてスプライン長さが非常に少ないです。まあフランジは固定されて動かないのでこれでいいのかもしれませんが71Bのスプライン長さの1/4くらいしかありませんので、ねじられ坊主になりやすいことは考えられます。そしてその左側にはボールベアリングが取り付きますが、71Bではここがアルミのブッシュタイプのプレーンガイドとなり、そのためにそこへの潤滑給油に苦慮した様子が見えます。そこは71Cまで続いて対策が追加され続けていますので、相当ここの焼きつき事故が頻発したのだと思います。

フロント側ですが見たとこは71Bと似ています。はたして互換性があるのでしょうか?

でも、カウンターは見るからに71Bと比較してシャフトが細く華奢です。

シフトフォーク側ですが、これも大まかには71Bと似ています。

5速ーバック部分ですがここは71Bとは大幅に外観が異なっています。特にバック用のスリーブとフォークが大きく変更されています。

中央部がバックを駆動するギヤですが歯車の右側が平面になるくらいに削れてしまっています。本来は山形になっており、バックに入れるときに滑らかにギヤがかみ合うようになっていますが、ここまで磨耗するとバックへシフト時にこの削れたギヤ平面にハブのギヤ山が乗り上げてしまい激しいギヤ鳴りがしたはずです。

そしてここはメインシャフト全体を束ねて固定するナット部分ですが、ナットの左側のワッシャーと5速ギヤの面との間に3mm位の隙間がありますし、よーく見るとその間にボールベアリングの玉が1個見えます。

普通はこのような隙間はありません。これでは5速のスラストを受けることができません。

ナットを外してワッシャーをはずしてみるとこのようになっていました。ボールベアリングの玉がワッシャーに無理やり押し込まれてへこみができています。本来は隣にある半円の切り欠きのところに入っているはずなんですがありません。結果ミッションが稼動中に玉がずれてしまい、ナットががたがたになったものと思われます。

全部ばらばらにしました。中央のアダプタープレートは形状もボルト穴位置もまったく71Bとは異なります。またバックギヤやカウンターの固定方法も異なりますので、予想以上の71Bとの差があります。

 

カウンターのアダプター部分のベアリングの後ろには2mmほどのワッシャーが入ります。

ギヤ類を内蔵するケース厚に差があります。

71Aは外々で176mm

71Bは外々で190mm

したがって14mmことなります。ここで各ギヤ厚を厚くした分を吸収したのだと思います。

メインシャフトですが上が71A 下が71Bですが、まったく異なります。直径だけは同じようですが、軸方向の寸法がまったく違います。

メインドライブシャフトですが、上が71A 下が71B

全長は同じようですが、ギヤの厚みが3mm異なっています。71Bは強化されたようです。

シンクロは同じようです。ベアリングは同じ

全体的にはBOX側へ3mm伸びたのか・・・・・

カウンターですがやはりだいぶ違います。ギヤの厚みがやはり3mm厚くなっているし、ベアリングも大きくなっています。1STのギヤ歯数は14枚でした。

 

この個体は4-3速ギヤが抜くことができるようになっているので、71A同士としては意外に流用ができそうです。

 

このカウンターにかみ合うメインギヤ側も当然ギヤ厚は異なっているはずで、事実1-5速まですべてギヤ厚が変更されています。

  

ハブは3-4が5mm 71Bが厚い

   1-2は8mm 71Bが厚い

  

結論

私が調べた限りでは71Aミッションへ71Bミッションから流用できる何かがあるかな と言うことで調べてみたのですが両者は思っていた以上に差が大きく、ほとんど別物と言う見方でいいと思います。

 

 同じエンジンに使うミッションなのになぜここまで設計変更したのでしょうか?通常このような大量生産製品の場合、一旦 生産ラインを引いてしまうとその仕様を変えるには膨大な費用がかかります。そうならないために、製品設計は後々まで問題が出ないように十分な安全率(通常はは3倍以上)を持たせ、しかも何回も試作を繰り返して実験してその耐久性をチェックします。一旦仕様が決まればそれを大幅に変更するのは大きなリスクが伴うので通常はやりません。

 しかし71Aから71Bへの設計変更は別物と言えるくらい大幅ですから、ここからは私の想像ですが71Aははじめから有ったものをどこかからか持ってきてお仕着せで設定されたものではないのでしょうか?メーカーにはそれぞれ得意分野がありますので、ゼロからはじめるにはよほどの技術力と設計者がいないとすべてをそろえることは困難です。また71Aと71Bとどちらが高級(お金がかかっている)かといえば71Aのほうです。難しい加工を惜しげもなく採用しています。自分で採算を考えて仕様を決めるならこのような仕様はありえません。たぶん当初はあるもの=71Aをどこからか持ってきて採用し、そこからだんだん内製化するためにデーター取りや生産性の検討をしていって、安く強いミッションを自前で設計していったんだと思います。結果、71Aと71Bは別物のようになった。どうでしょうか?違っていたらご連絡いただけるとうれしいです。

 

話がだいぶそれてしまいましたが

そうしますと3分割71Aミッションがもしも破損してしまったと言う場合は、現存する71Aミッションを何とか探し回って修復するしかないと言うことになります 

このことはS20エンジン使用のZ432やハコスカGTRにとって非常に切実な問題となります。逃げようがないですから。でも、貴重なS20エンジンで、繊細でこわしたら後の無い、ガラスのような71Aミッションでその横幅の極狭いシフトパターンと、どこまでが終わりかわからないポルシェシンクロの感触を確かめながらストイックにワインディングを8000rpmのデュアルエキゾーストで駆け抜けると言うのも、なんかやけくそ的で潔くてよろしいかとも思います。壊れたらS20エンジンとともに葬り去るの覚悟ですね。そのときは拾いに行きたいです。

 

後は切り貼りしか手立てはないか・・・・71Bのフロントに71Aの・・・・

ケンメリGTRって何台ぐらい作られたんだろう。ケンメリS20エンジン用ミッションは71Bのようですね。

 

L型エンジンの場合は71B一式を載せかえてしまえばいいかなと言う気はします。マウントがどうかな・・・