71BコンパチC エキストリウム α28 S20エンジン 魔法の箒 #1 初号機
2014年1月29日
S20エンジン用71A三分割ミッションを71B2分割ミッションに変更する。
S20エンジンを搭載するZ432やハコスカGTRのミッションはすべて71A3分割ミッションとなります。S20エンジンはミッションとの接合面の形状がL型エンジンとは違いますのでかなり特殊です。
S20エンジンとしては多分数千台レベルの生産だったと思います。
L型エンジンはR31スカイラインやそのあともバン・トラックディーゼルでも存在ましたから多分数十万台レベルの生産ですから、ミッションもたくさんありますし、71B,71Cと進化も遂げていますが、S20エンジン用ミッションというと71A3分割ミッション以外はほとんど目にすることはありません。
その数少ないS20エンジン用ミッションはだいたい71A3分割ミッションのポルシェサーボシンクロとなりますので、その操作性や寿命で泣かされる場合が多いです。でもこの71Aミッションが無くなるとS20エンジンにとっては深刻なことで、エンジンは元気に回っても走れないということになります。
そんな境遇のなかで、ただ一つ魔法のほうき ともいえるのが、ケンメリGTR用のS20エンジン用に供給された71B2分割ミッションです。生産数は1000台以下だと思います。
そんな貴重な物を新品でお持ちになっている方から、71BコンパチCのオーダーメイドをいただきました。 ああ、この世の中で一体何台残っているんだろう。
このケンメリGTR用71Bタイプ2分割ミッションケースがあれば、240クロスはもとより市販のクロスミッション、さらに私のやっている71Cミッションでのコンパチ化まで自由自在にできるし、当分のあいだ補修部品にも不自由はしません。まさに魔法のほうき ですが、最近は電気掃除機(AT)に押されてめったにお目にかかれませんでした。それが新品で有るとはやっぱり有るところには有るんですね。
今回このミッションケースに71系の最進化版である71Cミッションの中身を移植していきますので、
シンクロはすべてワーナータイプでしかも2速と3速はダブルコーンシンクロ、その他のシンクロも大径化されている物になります。
ご依頼人は名古屋市のKさんで、ハコスカGTRとフェアレディーZ432の両方をお持ちとのことですが、それ以外にもいろいろ持っていそうな方です。
今回は、この71B2分割ミッションをフェアレディーZ432に載せたいということで依頼されました。いままで2回 S20用71A3分割ミッションを専門ショップへオーバーホールを出したのですがどちらも修復は満足できるものではなかったとの事です。
こちらがドナーとなる71Cミッションの原型です。この後バラバラに分解して、ベアリングやシンクロリングを新品に交換し、また各部のチューンナップを加えていきます。
後ろ側画像です。
分解前に現状のギヤの状態をチェックしていきます。
1st 2nd 3rd 4th 5th
バックラッシュ 0.14 0.19 0.23 0.12 0.05
エンドプレイ 0.56 0.23 0.35 --- 0.28
1stのエンドプレイが多めですが規格は0.39までですから0.2ほどオーバーです。
この後ベアリング類をオーバーホールすれば良好な値になると思います。
組みたて
さあ、またいつものようにこのメインシャフトのチェックから入ります。
振れで0.04mm 芯ずれ0.02mmで問題の無い値です。
アダプタープレートのベアリング交換
セミシールドの特殊クリアランスを使います。
1速 2速の交換部品も含めた全部のパーツです。
2速はダブルコーンシンクロの新品
これは、1-2速のハブとスリーブです。
右側ハブのスラスト受け面にはダイヤモンドやすりでオイル潤滑処理をします。
このダイヤモンドやすりですがやすりの老舗 ツボサン製ですが使いやすいですね。
左側スリーブの内周ぐるりと付いているギザギザは重要でここが丸まるとギヤが入りにくくなります。
カウンターとセットしてサブアッシーまでこぎつけました。
次に、3速関係部品
やり方は同様です。
メインドライブシャフトもチェックしていきます。
メインインプット部の部品です。
個々のベアリングは負荷が大きいので重要です。
これはバックと5速の部品ですが、今回の一番大きな変更点は5速のギヤ比を通常の0.75では無く、0.83にするということです。
で、結果的にはバックがシンクロ付きになりす。話が良く分からないかもしれませんが、こうなるのです。(通常はリンクです)
このバックシンクロのギヤは丸まりが少なくすごくきれいです。
バックシンクロの主要部のギヤアップです。やはり中段部のギザギザが丸まっているものが多いですが、これはきれいです。
画像がかなり飛んでいますが、ギヤ部の組みつけは完了です。
assy精度確認
1st 2nd 3rd 4th 5th
バックラッシュ 0.08 0.12 0.12 0.15 0.06
エンドプレイ 0.35 0.16 0.21 --- 0.21
良い値です。
今回バックシンクロですので、リヤ側の様子が少し異なります。
5速ーバックのシフトパーツですが、右がバックリンクタイプのシフトフォークでなにやらいろいろリンク部品がついています。それに比べ左側のバックシンクロ用シフトフォークは単純にフォークのみです。形やサイズとしては共通の様です。
シフトフォーク・ロッドを組みつけていきます。
ケースの組みつけ
ケースの組みつけで一番問題なのはこのストライキングロッド・レバーの分解です。
なかなか外れなくて難儀します。ジグを工夫することでやっとできるようになりました。
また、ストライキングロッドは追加工を加えないとコンパチ化時には問題が生じます。
オイル漏れを防ぐためオーリングを交換していきます。
また、一気に飛びますがフロントケースについては恐れ多くて手が付けられないので、シフトロッド穴のφ16追加工はやめて、ロッド側先端をφ14に追加工しました。ですから71Bへの復元も問題ありません。一か所だけ少し追加工しましたが、ほとんど手つかずといっていいです。
これで完成ですのでミッション簡易試験機 e-zanaraizer にセットしてシフトの状態・オイル漏れ・異音・振動・スピードメーターギヤなどを確認していきます。やはり2-3速のダブルシンクロはスコンと入りますね。異音・振動は今までのと比べても極めて少ないです。
今回も5速に入れて1時間回しっぱなしにして温度上昇をチェックして9度cの上昇量でした。
完成です。
vintagecraft-e-za の夜の工房前です。
時間が関係ない私は、何かをしようと思えば夜でもこの工房へ足を運びます。
そこでは私のフェアレディS31ZL52年式も、ワインレッドがすっくと映えて見えています。
外観も内部も昭和の残骸で、すでに捨て去られようとしていたいろんなもので溢れているのですが、新しい物が次々に作り出されては捨てられる現代では見向きもされないものばかりかも知れませんが、
私はここでは幸せです。
私にはぜいたくすぎるこの夜の入り口 e-zaの工房前
アスファルトの音がする
6800rpmのファンネル音がする
でも客観的に見れば新しいもの達の流れの中で、羽がちぎれた極楽蜻蛉が流されて
いる様なものかも。
71BコンパチCミッション Z432の魔法のほうき も完成したかに見えたのですが、この画像から有ることにが気になります。
今回5速を0.83という通常の71Cで有りえない減速比(3速シングルなら有るけど)としたので、バックシンクロが必然的に付いてきます。ということは5速からシフトミスしてバックに入れてしまうということがあり得ないことではありません。まあ、いくらシンクロかけても入らないとは思いますが。で、依頼主と相談したのですが、せっかくこの様に綺麗な前後セットでケースが出来たのですが、やり直すことにしました。
で、この様になりました。すこしリヤエクステンションが鋳肌の違いがあり、前後ちぐはぐ感があります。
リブの違いもありますが、一番の機能的な差は左側面にある小判型のパーツで、バック誤操作防止装置になります。これはノック式ボールペンのオンオフと同じ要領で、5速からは一旦ニュートラル4速側に戻してでなければバックには入りません。ですから、5速からそのままバックには入らないので誤操作に気がつくということです。でもやる人はそれでもやるんですけどね・・・・。
この装置もこのコンパチの組み合わせではそのままでは組みつけできず、かなりの改造が必要でした。
再度e-zanaraizerにかけて確認して今度こそ完成です。
このz432の魔法のほうき なんですが、掲示板でも話が出ていますがzの前期ボディーだと干渉がでそうだという話があります。
すこしおまじないをしないと乗れないかもしれません。で、もう少し工夫してみます。
取り付けは依頼主がやってくれますので、楽しみです。
依頼主のKさんより掲示板に取りつけ時の様子をレポートいただきました。
K (火曜日, 04 3月 2014 22:13)=依頼主
Z432 初期モデルにコンパチC取り付け完了しました。
今回の作業の内容
フロアートンネル 7mmほど前方カット、左右は5mmほどカット
コンソールボックス 前方1cm、左右斜め7mmほどカット
ヒューズBOXを上部カバーに当たらない程度移設
シフトレバー 71B ノーマルを使用
フロアーブーツ 初期の物を使用
コンソールブーツ 初期の物を使用
スピ-ドメーターケーブルのギア比の変更
コンソールボックス 上部 8mmほど5速側にスライドさせて固定
プロペラシャフト 現物合わせ加工、当然ですがバランス取り含みます。
フロントカバー(KPGC110用)2分割に交換
以上の工程にてコンパチCを搭載できました。
左右のふり幅が71Aより大きくなるため、開口の小さい初期型のフロアートンネル、鉄板にはめ込むタイプのフロアーブーツを取り付けるとさらにトンネルが狭くなるのと、デフの位置が前期に比べ(初期型は)前方のためペラの加工が一番の問題でした。
45年近く前の車両ですので個体差も多いにあると思いますので、あくまで御考まで にして下さい
初期Z432にコンパチcミッション変更は一連の作業にて完成しました。しかし周回レースや車検整備の時など、乗り手が変わる時など癖がなくミッションが現行の車のように入りやすいため多いにメリットあると思います。オリジナル思考の方などの方には、いくつかの問題が発生しますので、現在搭載の71Aをe-za様の匠の技にて精密にオーバーホールしていただくのも良案と思います。
尚、掲示板にて、ご丁寧にご教授して頂きました皆様、丁寧な仕事で製作していただいたe-za様にこの場を借りて御礼申し上げます。誠に有り難うございました。
e-za (金曜日, 07 3月 2014 10:40)
こんにちは
e-za 川嶋です。
Kさん 初期型Z432への71BコンパチCの取り付け とうとう成功したんですね。
レポートありがとうございます。外観からはダブルシンクロ付き71Cミッションが入っているとは分からないZ432が出来上がったとはわくわくします。
下記のレポートでもわかるとおり3分割71Aミッションを搭載するS30系Zは71B化する為にはそのトンネル開口部の小ささに対処する工夫が必要となりそうですが、機能を取るかオリジナルを重視かはオーナーの好みによるところとなりそうですね。
現在71Bスプラインタイプのコンパチ化はもちろん手つかずポン付け可能ですが、71A3分割車も改造は発生しますがやりようによってはコンパチ化は出来るという事ですね。
わたしもさらに研究していきます。ありがとうございました。