2013年4月29日

FS5C系ポルシェシンクロの謎

 

FS5C71AやFS5C71Bにはポルシェシンクロ=サーボシンクロが採用されていたことは皆さんご存知だと思います。このミッションはハコスカやS30Zの初期から後期までのすべてに採用されていたミッションですので、これらの車の8割がたはこのミッションだとおもいます。

 

このミッションの評判については賛否両論ですね。

特に多いのはシフト時の節度感が乏しく、シフトしたのかどうかわからない。またどこシフトしたのかわからずエンジンやミッションを壊しやすいや、ギヤ鳴り、異音などとかく良くない評判が多いですが、それはなぜなんでしょう?

 

ここではその原因を調べることと少しでもこれを改善する方法があるのかを探求します。

まずは不具合現象やシフト機構を調べてヒントを求めます。

 

発端は私がかつて使っていたFS5C71B 2分割ポルシェシンクロミッションですがサーキットでは3周も回ると2速については変速のたびに激しいギヤ鳴りが出るようになってしまったものですが、今回それを分解してチェックしてみます。

画像のようにシンクロリングに段付き磨耗が発生し、右側スリーブの刃先も丸まりが出ています。

他の4速などの負担の少ないシンクロにはこれが見られません。なぜ磨耗するかと言うとシフトダウンの場合スリーブ側は低速で回っているところへ高速で回ろうとするギヤーを押し付けるから速度差が生じ磨耗します。特に画像磨耗部はギヤー側はノコギリの歯のようなものに押し付けられますので、これではシンクロリングもたちまち磨耗してしまうでしょう。

ポルシェサーボシンクロのギヤー側の構成パーツです。細かな部品でできていますが、スラストブロックには三菱のようなマークがありますが少し違うかな。これとアンカーブロックですがこれは作ろうとすると非常に技術屋泣かせな部品です。おそらく焼結工法という金属を細かな粉にしたものを型にいれて焼き固めると言う手法で作ったと思いますが、そのやり方はタクトがかかり高く付いたと思います。今私が生産するならプレス冷間鍛造を試みますが。またはファインブランキングで打ち抜くと言う手もあります。

組み立てるとこのようになり左側の幅広のスナップリングで上から蓋をして固定しています。この機能ですが教科書に書いてないので想像するしかないのですが、①のシンクロリングにスリーブから回転力を受けると②のスラストブロックにスラストを発生させて③のバンドブレーキを押し込みます。バンドブレーキは④アンカーブロックに突き当たり止まります。サーボと言われる所以はこのときにアンカーブロックおよびバンドブレーキに⑤⑥の方向に膨らもうとする力が発生してこれらが相互に反応し合って次第に摩擦力増大して行くと言うような原理なのではと想像します。間違っているかもしれません。これを扱っていた関係者の方でここがわかる方お教え願えるとうれしいです。もう40年前の技術ですから教えてくれてもコンプライアンスには引っかからないですよね。

 

 

 

こちらは4速ですが上の2速とはだいぶ様子が違います

ほとんど磨耗が見られません 

こちらはバックと5速ですが、バックギヤはいかにもお金がかかっていそうな削りだし品だし、シフトフォークについては黄銅鋳物を削りだしで作っています。外観的にはいかにも精密機械のようでメカ的な美しさがあります。

これはシフトレバーのストライキング部が勘合するシフトキーの部分で、このH型パターンの中をレバーが移動することで変速しますが、コンパクトにきれいに作られています。

 

 

このミッションの完全分解修復作業について

 

コラム ”空飛ぶZ432” で詳細を述べています。そちらをご覧ください。

 

この中で シフトフォークの不合理

     天狗の鼻の注意点

     シフトリンケージの怪

などを記載しています。

 

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続く 今後記事がまとまり次第アップします。お楽しみに