2025年4月18日

Z432 γーW55

Z432用のミッションをフルスペックのワーナー化で作ってほしいという依頼です。

このミッションフロントベルハウジングを見るとZ432用であることが一目瞭然、このところめっきり姿を見なくなりました。

分解していますがどうもこの部分がダメそうです。

ケースがガンガンに叩かれています。なんでこんなに叩かなければならないんだろう?

こういう所も

全箇所叩かれています

なんでだろ、こんなとこまでアルミリブが変形するほど叩かれています。

 

このセンターケースは使って使えないことは無いけれど、今回ブラストも掛けて外観もきれいにするフルスペック使用ですので、交換が望ましいでしょう。

ギヤ部についてはそれほど損傷はひどくなかったです。ただただケースのみぶん殴られている。

M38ナットも緩んでいませんでした。

バックアイドラーは途中で交換されたのかきれいな状態です。

組み立てに入りました。

1速~4速のメインギヤはすでにポルシェシンクロからワーナーシンクロに変更しています。

1-4速までをアッシーしました。

ポルシェシンクロより隙間が少なくがっしりしている印象となります。

5速はポルシェのままとなります。

今までこのγ-Wバージョンを考え出してから10年ぐらい経ちますが、やはり当時から無理だとあきらめた71Aの5速のワーナー化は今この時点でもできないでいます。どうしても無理なんです。できる方法が有ればと思うのですが・・・・

 画像の様に5速の裏にはスラストニードルベアリングを構築し、M38ナットはシングルのスカート付(私はナットの後ろのカシメをする部分をスカートとかってに名前を付けています)

そしてサイドロックボルトでさらに回り止めをします。

ギヤ部分が組み付きました。

ギヤ精度

 1ST  2ND   3RD      5TH

エンドプレイ

0.10 0.15 0.21 ーーー 0.06

バックラッシュ

0.11 0.13 0.08 ーーー 0.22

問題の無い値です。

 

 

 

シフトロッド・シフトフォークを組付けました。

1-2速フォークは3点支持フォークに交換しています。同時に打ち込んでいるスプリングピンもΦ4からΦ5のダブル打ち込みピンとなります。

左が3点支持フォークとなります。

フォークの又の真ん中のところにスライド面が加工してあり、爪部2か所と合わせて3点でシンクロスリーブをシフトするようになるのでスリーブが傾きにくく、フォークの爪の片減りも防げます。

リヤエクステンションのコントロールピン(シフトレバーの左右の節度感を出すためのプランジャー)部分は71Aではオイル漏れの頻発箇所です。

対策としてオーリングを交換することはもちろんですが、私はこの画像の左側のようにオーリングを2重化加工をします。これで相当オイル漏れを減少させることができます。

そしてシフトロッドが通るこの部分もオイル漏れの弱点ですが、ここも私はオーリング2重化加工をしています。

リヤエクステンションに最後のベアリングを打ち込みます。この後オイルシールを打ち込み、そのあとフランジコンパニオンを取り付けます。

組付けが完了して回転試験しています。

上手くできたと思います。


2025年6月30日

71A3分割 γ56 SR311

 このところ71Aのご依頼が増えています。

分解していきます。

この時点で1速と2速のシンクロCリングはダメであることがわかります。

拡大するとこんな感じでシンクロCリングの地肌がすでに出てしまっています。

メインシャフトのM38ナットはつるんでいることが多いですが、今回はこのタガネ攻撃で締めこんであって緩みはなかったです。でもナットがかわいそうです。

1-2速のシフトフォークは完全に摩耗しています。

正規厚み7mmのところ5mmしかありません。この2mm分がシフトストロークが長くなっていたとともに、このままにしておくといつかはシフトフォークの爪が折れていたことでしょう。

そして3速4速のシフトフォークもほぼ同じくらいすり減っています。

つまりこのミッションはシフトフォークが2セットともに交換が必要となります。

メインインプットです。

外周側のシンクロリングを止めている大きなEリングの表面が光っていることより、前にここを裏返した履歴が予測され、その時にシンクロCリングも裏返したのだと思います。

以上挙げた部分以外のギヤやハブスリーブは大きな損傷は見られませんでしたので、シンクロCリング交換2個とシフトフォーク交換2個が追加費用となると思います。

交換パーツを揃えて組み立てに入っている。

ここは1速ー2速の部分

シンクロCリングがダメだったので交換品を用意した。

一気に5速まで進んだ。

5速は5速裏スラストニードル オプションを組むので部品を揃えていく。

5速のカウンターギヤの裏はこのように何かが接触して光っている面がある。ここに接触するのは位置的に言って5速のメインギヤのシンクロ舳先であり、これは5速裏を押さえているM38ナットが過去に緩んでいたことがあることの名残である。そのため以前に一度修理していると思われる。

今回はこの部分を対策するため、γバージョンのオプションである5速裏スラストニードルの構築を行っている。同時にM38ナットはスカート付のシングルナットに変更になり、緩み止めとしてサイドロックボルトを追加加工している。M38のスカート部はもちろんポンチでメインシャフトにカシメ固定することになる。これで2重の緩み止めを施したことになります。

ギヤ部分が組みあがりました。

ギヤ精度

 

エンドプレイ

0.10 0.15 0.12 ーーー 0.05

バックラッシュ

0.05 0.05 0.10 ーーー 0.05

このセットはなぜかバックラッシュが全ギヤについて規格内ではありますが少な目となっています。

爪の摩耗が激しく交換が必要になった1-2速シフトフォークは3点支持仕様にオプション変更します。

これでシンクロスリーブの傾きが削減できるのでシンクロスリーブの欠けやシンクロCリングの編摩耗を低減できるはずです。

 

3-4シフトフォークも爪の摩耗が激しく交換となりますが、こちらは2点の純正品で良品と交換です。

リヤエクステのシフトブロックの分解修理です。71A歯ここも分解されない場合が多く、シフトブロック内にあるオーリングが交換されないままの場合がありますので、リヤエクステ後部のオイル漏れが多くなります。

ストライキングロッドが通るこの部分も2重オーリング化しています。

シフトコントロールピンですがSR311の場合右側のようにオーリングが存在せず全くの素投資ですのでオイル漏れ放題です。今回は左側のようにオーリング取り付けます。

この様にオーリングを取り付けていきます。


組み立ても最終段階に入りました。

ケースに組んでからこの部分にリヤエンドのベアリングを打ち込みます。

その後オイルシールを打ち込みます。

この上にコンパニオンフランジをM27ナットで固定します。

ミッションケースに組んで完成です。回転試験も良好でした。1-2速はシンクロCリングが新品なのでまだこなれていない感じですが3000Kmぐらい走ればかなりなじんでくるはずです。