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ミッションオーバーホール

その11~

・その12~

その15~ ハコスカGTR 71A3分割

その16~ TSサニー用  56Aレース用

 


2025年7月9日

TSサニー用 56Aサーキット用 

OH16

 富士スピードウェイで私のサーキットS31Zでアタックしに行ったとき、駐車場で声をかけてくれたレーサーさんとお話ししていて、このTSサニー用の56Aの修理を依頼されました。

 外観からすでに分かる通りスピードギヤは無し・バックスイッチは無し・センタープレートはアルミビレット削り出し強化品等完全にTSレースの為に作られたものです。すごく軽く片腕で持ち上げられそうです。

故障内容としてはシフトすると意思に反して別のギヤにシフトしてしまうというものです。これから分解して原因をチェックしてゆきます。

リヤエクステンションを取り外すと矢印の部分のスラストワッシャーが何か変です。

裏返すとこのように銅合金のメタルがガジガジにかじっています。ほかはあまりダメージが見られないので過去のブローの名ごりなのかもしれません。

シャフトの向こう側のメタルも同じくガジガジ

このメタルは現在日産部品からはもう出てきませんのでこれを修復するしかなさそうです。部品どりミッションが有ればもっとなんとかできるのですが。

フロントベルハウジングのなかのフロントカバーですがこれもアルミビレット削り出しの強化品です。

取り外すと内部にこのエンドプレイ調整用シムが入っているのですが、なぜかこのように粉々になった鉄粉みたいなものを噛んだ跡が見られます。

ギヤを取り出しました。

やはり矢印の部分の変形が気になります。

こんな感じでギヤ歯に何かが食い込んだ跡が見られます。ギヤ欠けには至っていないので使う事に問題は出ないとは思いますが、ダメージがどこまで進んでいるか心配ではあります。

シフトフォークを取り出しました。ここで今回の最も問題点となっているシフト不良の原因がわかりました。

後ろ側2-3速のシフトフォークをシフトロッドに固定しているスプリングピンがこのように粉々になって出てきました。前側4-5速のシフトフォークについてはもっとひどくピンが粉々になって出てきました。これではシフトフォークを固定できず、シフトフォークがぐらぐらと動いていたことでしょう。

シフトフォークが取り付けられていたシフトロッドを見ると画像の様に打ち込み穴以外のところにたくさん丸い打こんがあります。これはシフトフォーク固定ピンを打ち込むときに位置を間違えた時にできた打こんで間違いないと思います。それもたくさんありますので何回も穴の無いところにピンを打ち込もうとしたのでしょう。その結果スプリングピンには大きなストレス(ヒビ)が発生し、後から修正して正しい位置に打ち込んだとしてもそのストレスの部分からスプリングピンは破断に至ります。まさに今回起こったシフト不良の故障内容そのものです。そしてこのような間違いを起こす原因はシフトフォークの前後を間違えて組んだ為だと思います。

ただこのピンは元々強度不足が有ったようでこのように打ち込みミスしなくても破断している例が有ります。

使い方によってはここがΦ4のスプリングピンでは無理かもしれません。

ギヤを分解しました。

メインインプット(5速)はかなりシンクロCリングが摩耗して広範囲で金属地肌が出てきています。このようになるとシンクロが滑ってしまうのでシンクロ作用がすごく弱くなってしまいます。

4-5速ハブスリーブです。

外周側のシンクロスリーブが各ギヤのシンクロ舳先と噛みあうのですが、この画像の様にほとんど全歯がこのように丸まってしまっており、このようになるとシンクロ舳先が噛みあう事が出来ずにはじかれてしまいます。何とかしなければなりません。

4速ですがシンクロCリングは少し摩耗が見られます。通常ですと交換ですが、56Aのシンクロは私は入手ができないのでこれも何とかしのがなければなりません。

4速のこの作りを見ると特殊なつくりで純正の出来とは異なります。アフターメーカーのクロスギヤの様な物では無いでしょうか。

3速です。これもほぼ4速と同じ状態です。

そしてこれは2速ですが、このギヤはかなり問題ありです。矢印の範囲全部ほぼ1/3周がシンクロ舳先(ギヤが繋がる部分)が欠損しています。

交換部品が無い場合はこれを何とか使うしかなくなります。

2-3速のハブスリーブ

スリーブは4-5速スリーブよりもっとひどく舳先は球状に変形摩耗しています。

カウンターですがこれも問題ありです。

カウンターにはこのような打こんが沢山あります。ギヤ歯が欠けていないので何とか使う事はできそうですが、いつ欠けが出てもおかしくない感じです。過去にブローした履歴が有るのでは、おそらくメインインプットのカウンターギヤが過去にブローしたのでは。

アルミビレット削り出しの強化センタープレートです。

このカウンターベアリング穴の淵の変形や、ベアリング穴底のガリガリした様子は何か起こった感じです。