2014年10月5日

さらに Z432-71A 3分割ミッションのオーバーホール

 

Z432用S20エンジン 71A3分割ミッションのオーバーホールを依頼されました。

4号機となります。

今回は私が15年ほど前に入手してずっと温存していた71A3分割ミッションをドナーとして使い、あらかじめオーバーホールしておきます。

 

そしてフロントケースのみS20エンジン用現車から外して交換します。

 

こうすることで、日帰りミッション載せ替えが可能になります。(遠方だと2日ですね)

 

メインシャフトを測定していますが0.005mmしか振れていません。

いつも変形消耗していることが多い1速のシンクロ舳先ですが、ちょうど馴染みがでて光ってきて入りやすくなってきたかなと言いう状態です。

 

シンクロリングなどはもちろん新品に交換してゆきます。

シンクロは角の部分にすり減りがでていて、表面の溶射物の様なものが無くなっています。

 

この溶射物の凸凹がシンクロするための摩擦力を生んでいるはずです。

1速の組み立て段階

2速ですがこちらのシンクロ舳先は1速よりも少し丸まりが大きいですが、それでも程度は軽い方です。

ダイヤモンドやすりで少しだけ修整して使用可能です。

3速、ほとんど新品の状態と変わらないくらい舳先がとがっています。

シンクロスリーブですがこれが前述のシンクロ舳先とかみ合うことで動力を伝達します。

 

こちらの方が固く作ってあるので、こちらが丸まることは少ないですが、時々欠けている場合が有ります。

 

また、この内周は遠心力が常にかかるのでスラッジがたまりやすく、掃除するとこのようなものがいっぱい出てきます。

この泥を洗い油で溶かすと、細かな金属片がいっぱい出てきます。セメントのように固まっているので、オイル交換時にも排出されないようです。

 

またこのスリーブの飛び歯の部分にシンクロハブがスライドするので、カドの部分を面取りしてゆきます。通常はピンカドのままです。

メインインプットギヤ部もシンクロ舳先は新品のようです。シンクロリングやベヤリングは交換してゆきます。

 

このベアリング一つ抜くにも専用ジグを使わないと上手くいかなくて痛い目にあることが有ります。

 

このベアリングをギヤに密着させることは重要で、上手く圧入しないとかじりが出て浮き上がります。

良く見ないと気がつかないですけどね。その結果スラスト方向の変な干渉や異音の原因になります、

画像が有りませんが、このあとこれらの部品を組み立てていきます。

 

ギヤ精度

    1st  2nd  3rd 4th  5th

BR 0.09 0.15 0.15 --- 0.12

EP 0.14 0.06 0.05 --- 0.14

 

BRは各ギヤベストの状態で摩耗が少ないことが判ります。

これが大きいとアイドリング時のガコガコ音(チャタリング音)が出やすいです。

 

1-2速のEPが少し少なめですが、ディスタンスピースなどが贅沢言えない現状ではこれで行きます。

バックギヤですがさすがに少し欠けが見られますが、程度は良い方です。メーカーはこの現象の修正に手を焼いたようで、

先ずこのギヤを大きくして強度を上げようとしました。

 

それでも駄目で71cではバックシフトをリンク構造に変更しました。これはシフト距離を長くしてギヤが止まるまでの時間を稼ごうとした対策ですね。

 

それでも駄目でとうとう71cの終期はバックにもシンクロを付けましたが、結局だめでした。

 

ここは人間のシンクロを使ってもらうしかないです。

そしてもう一つ、これは1-2速のシフトフォークですが、やすりで示しているところは段付が出来ていますが、これはすり減って出来たもので普通は上の部品のように平らです。しかも良く見ると左側が大きくへこみ右は少ない、つまり斜めに減っています。このフォークがシンクロスリーブを押しますのでつまりシンクロスリーブは斜めにギヤへ押しつけられていることになります。これがひどくなると当然、ギヤが入らないことになり、最悪シンクロスリーブが欠けます。

 

前から述べていることですがこうなる原因はこのフォークの爪先端が180度位置より狭く設計されていることが原因だと思います。通常ではありえない設計ですが、なぜかは判りません。

なんとかしたいと考え続けてやっと考え出した対策が、上側の部品に交換するということです。上の部品にはフォークの又の中央にもう一か所スライド面が設けてありますので、3点支持になりますので遥かに安定して平行に押せます。この方法は私はいままでウェブ上では見たことがないし聞いたこともないので、おそらく他には無い71Aミッションになったことになると思います。

 

 

前回危うく取り付け忘れかけたオーリングを取り付けた確認画像です。ベアリングももちろん入っています。

そして、回転試験です。

 

今回も問題ありません。

 

 

完成です。

2014年11月1日


依頼主がやってきました。


今回はこの車ですからいやがうえにもさらに緊張です。


小雨模様であったため、千葉から車載機でやってきました。ここで降ろしてから、3kmほど離れたところのミッション交換を実施する馴染みの車屋さんへ自走します。ミッションはあらかじめ完成してあり、同時に持ち込みます。


うーん


内装はマッハステアリング


シフトレバー ブーツ



ワークスシフトノブ



トンネル上のメインスイッチ


すべて本物です

リフトアップしてミッション交換に入ります。


リフトアップポイントですが、


リヤはスタビライザーの取り付けブラケットしか触れませんでした。サイドシル部はデインジャラスです。


フロントはテンションロッドの取り付け部にしたかったのですが、いかんせんリフトアームが伸びません。仕方なく2本走っているレインフォースメントでゴム板付けて受けましたが、ここはやはりなんとかしてテンションロッドで受けるべきでした。



今回はフライホイールも同時に交換しました。

 

空飛ぶz432 でもレポートしましたがs20エンジンのフライホイールはたいていギヤ部がズルむけしてます。

 

原因はセルモーターの飛び出しギヤの面取りが小さい為とにらんでいますが、しばらくはこのままでいけます。まただめになるようならセルモーターギヤを対策した方がよろしいかとおもいます。

 

リヤ100リッタータンクの形がそそります。本物です。ちょうどリヤデフューザーの様な形になっていて、空力でも効果有りそうです。

 

フロントはミッション後ろまで一体のFRPアンダーカバーで覆われていました。

ミッションが取り付きました。

11月で雨だったので夕方4時ごろでもう暗くなっていますが、完成して積載しました。

 

雨だったので、試運転は出来ず、工場内で少し動かしただけです。

 

 



次の日、オーナー様が試走していただきまして問題ないとの連絡をいただきました。


その翌週には日光までツーリングを楽しまれたようですが、いろは坂は登ったのでしょうか。

でも、このややロングツーリングでミッションが問題でなかったならば、一応安心です。


その後、フル加速時のゴリ音が気になるとのご連絡があり、私も同乗してみましたが、

確かに音は有りますが大きさは低いレベルなので発生源や、ここが原因と言うようなところも

見いだせず、1000kMまでこのまま乗っていただくことになりました。


シフトチェンジは問題ないようなので、1000kmにてもう一度様子を見てみます。








2014年12月23日


上記でZ432Rにもともと付いていて取り外した71Aミッションを分解チェックしてみます。数年前にオーバーホールしたがゴトゴトと音がでていたとのことでした。


分解してみると先ずこの通りシフトフォーク先端のスリーブ溝とかみ合う部分、極限まで摩耗しています。2-3mmくらい隙間が見えます。摩耗度合いの最高値です。

これではシフト前後ストロークがものすごく大きくなり入りずらかったと思われます。


また、バックラッシュやエンドプレイですが手で動かした限りでは感知できない、つまり測定不能の状態でした。


オイルがものすごく粘度が高いものを使っているようでそのせいかもしれませんが、数値が小さめなのは確かだと思います。エンドプレイの過小=締めすぎは焼きつきの原因になります。

1-2速側の拡大


3-4速側はもっとひどかったです。

問題のM38ナット部分ですがやはりタガネで叩いたような跡が右側のナット側面に見られます。こちら側にあるということは緩めるときにタガネを使ったのでしょうか?良く理由はわかりません。


丸いポンチ後は緩み止めだと思いますのでよろしいかと思います。またこのナットの間にはネジロック剤が使われていました。締めこみはすごくきつくされており、ギヤを確実な方法で回り止めしないと緩めることはできなかったと思います。私は何回も試行錯誤してギヤ類にストレスを掛けることなく作業する方法を考え付いていますので、なんとか切り抜けることができました。

シフトフォークたちです。


どれも見事に先端が段付摩耗しています。

5速のスラスト面ですが薄っすらと焼きつき初期の兆候が見られますが、71Aはここも泣き所のようです。71Cではここの部分にスラストニードルベアリングを取り付けてこれを防ぐように進化しています。私のつくる71BコンパチCミッションは当然全てここにスラストニードルベアリング付となります。


焼きつきはまだ初期段階なので修整可能と思います。

この5速ギヤは製廃だし、アフターマーケットでも見かけません。 

要となるアダプタープレートですが、激戦の様子が見てとれます。6か所あるプラスネジの内2か所はすでにプラス溝が破壊されています。ドライバーで緩めることは出来そうも有りません。

 

 

全体的な印象ですが、ボールベアリングやニードルベアリングに大きな損傷は無く比較的最近交換されているように感じます。走行時の異音につながる様な異変は見られませんでした。ケース側とのクリアランスも問題ない状態でした。ただ、このミッションは載せ替え時にフロントケースを入れ替えた時にメインインプットシャフトのベアリングの前天狗の鼻の裏に取り付けるべきスペーサー1.4mmが入っていなかったということはありました。しかし、メインインプットシャフトのベアリングはカラーリングによって固定されるのでそれが直接ガタになるかと言うとそうでもありません。

 

シンクロリングについてはかなり良い状態でまだあの独特の表面の色が残っている状態でかなり新しい印象でした。

 

シフトリンケージ関係についていえば画像のとおりかなり損傷がひどく、すごく操作しにくかったのではと思います。

もう少しでシフトできなくなったことでしょう。

 

メインシャフトについては振れが少し大きかったです。どうしてもこの長いシャフトは曲がりが多少は出ますが、傷とかは無かったです。

 

以上、どこかで数年前にオーバーホールしたという履歴のこのミッションですが、不具合はありましたが、異音発生の原因となる様なものは見られなかったという結果です。