2024年11月27日
SR311ミッション γ-W54
このところSR311が続きます。
プロペラシャフトの先だけついてきたのですが、これが現在使っているのかどうか不明ですが、十字ジョイントがかなり動きが固く、もうグリース切れしているようです。今回はミッションなので対象になっておりませんが、早いうちにオーバーホールをした方が良さそうです。
フロントベルハウジングを外してこの部分に違和感があったのですが、天狗の鼻の打ち込み段差が出ていません。
軽く押したらこのように段差が出てきました。という事は天狗の鼻は緩んでぐらぐらという事になりますので、オイル漏れの原因になりますので天狗の鼻のオーバーホール追加(固く止まっていれば通常はやりません)が確定的です。
このセンターケース、いろんなところが叩かれてへこんでいます。こんなに叩かなくても正常に組付ければすんなりと入るはずなんだけど・・・。
だいぶ叩いていますね。
せめて当て物をして叩いていればこんなにはならないと思うんだけど。合わせ面を叩いていないだけましかもしれないけど。
ここの支点ピンが欠落しています。シフトレバーとストライキングロッドを結合するピンです。
スピードピニオンはかなり歯数が少ないものを使っています。
ここにも打こんが有りますが、外観的なところなので実害は無いでしょう。
おなじみのM38ナットですが叩かれまくっています。タガネ攻撃です。固く締まっているかなと思ったら、するりと緩んでしまいました。大ナットの方に回り止めワッシャーが付いているので後ろまで緩んで下がってしまう事は無かったようです。
1速シンクロ、うっすらと金属地肌が出ているので交換目安です。
しかも、シンクロ舳先がひどく丸くなってしまっています。
どうしても少しは丸まるのですが、これでは丸いというよりはほとんど破壊されています。交換は必至です。
2NDも同じ状況です。
3RD同じように丸まっていますが、これが許容できる限界の状態だと思います。
4速メインインプットのシンクロリングも金属地肌が出てしまっています。
5速はまあまあ良い状態に見えます。
バックアイドルはこの画像を見てびっくりするのですが、全く違うタイプのギヤを無理やり取り付けているようです。そのためギヤのヘリがガリガリに破損しています。
バックアイドラーギヤの端面はもともと平面だったことがわかります。本来は噛みあいやすくするために舳先形状になっているはずです。
スピードウォームは端面に傷が有り、刻印が確認で来ませんでしたが、歯数を数えると6Tの様です。SRは5Tである場合が多いのですが、6Tの場合もあるのかな。
シフトフォークはそれほど片減りはしていませんでした。
ここが変なことになっています。1速とセンタープレートの間のカラーなんですが変形しています。
こんな風になっています。
回り止めの切り欠きがずれていて、ボールに乗り上げています。
殻を何とか取り外してみるとこのようにボールがずくみこんでいてなかなか分解できませんでした。
そしてカウンタセンターベアリングの後ろに入れるべきシムがこのように2枚出てきました。本来は右側の厚いほうが1枚だけのはずです。左側のシムはゆく見たらカウンターのフロントベアリングの前に入れるべきものです。この組み方だとカウンターがメインギヤに対して0.6mmほどずれて組まれることになります。
組み立てに入っています。
オーナー様とのご相談で71Aポルシェをワーナー化するγーWバージョンで進めます。
γーWバージョンには特別なパーツが必要なためドナーが無いとできません。そのドナーがこのところめっきり減ってしまったため、入手には大きな費用が掛かります。来年からはこのγーWバージョンは費用アップは避けられない状況です。
画像では1速、2速ともにすでにワーナー仕様のギヤが用意されています。もちろんギヤ比は71A5速の純正のクロスギヤ(240クロスとほぼ同じギヤ比です)となります。1速が2.9から始まるタイプのものです。
変形していた一速裏のワッシャーは別のものと交換します。
このワッシャーについては私はこのようにオイル溝を追加工しています。
1-2速を組みました。
3-4速も組んでほぼ71Bと同じような外観となっています。ポルシェより各部の隙間が少ないのでがっしりした印象を受けます。
リヤ側に入って
見たことのないバックアイドルギヤ(右側)に替えて左側の順S寧のバックアイドラーギヤと交換してゆきます。
5速ギヤはかなり程度が良いのでこのまま行きます。ポルシェシンクロもしっかりしていて金属地肌までの削れは見られません。
この5速についてもちろん私は何とかワーナー化できないかとかなり試行錯誤したのですが、いまだにその解決策が見いだせません。71Aはこの部分が特に特殊なのです。
5速ーバックを組んで、5速裏スラスト受けを構築して、M38ナットはサイドロックとスカートカシメ併用の緩み止めを実施。
カウンター側の後端の止めボルトは純正の薄頭M14の6角ボルトから画像の通常の厚み頭のM14 6角ボルトに最初から変わっていましたのでそのまま組み戻します。このボルトの頭はこの状態でもケース側に干渉しないことは確認しています。
ギヤ部分を組ました。
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
エンドプレイ
0.05 0.11 0.05 ーーー 0.10
バックラッシュ
0.14 0.13 0.15 ーーー 0.10
1速のエンドプレイが少な目ですがまずまずの値で調整しました。
シフトフォーク・ロッドの組付け
1-2速のシフトフォークは3点支持とし、さらにフォークの腕が太いタイプを使いました。ワーナー化するとそもそもシフトフォークの負担は減るのですが、特に3-4速はシンクロの負担が減ってくるのでさらにシフトフォークは負荷がかからなくなりますのでシフトフォークは純正の通常の2点支持にしています。
緩んでいた天狗の鼻の養生です。
天狗の鼻の根元にはオイル漏れ防止の大きなオーリングがア入っていますが、今までのは左側の物ですでにぺしゃんこにつぶれていて丸いオーリングではありません。これを右側の純正より0,2mm太さの太いオーリングを探し出してありますのでこれに交換してオイル漏れ防止能力を上げておきます。
リヤエクステンションのシフトコントロールピンですが、SR311はオーリングが設計されていません。従ってシフトするたびにここからオイルが上がってくるのでリヤエクステのしっぽの辺りは常にオイルで湿っている場合が多いです。この当時はオイルが湿る程度はまったく気にしていなかったのでこれで良かったんだと思います。
オーリングをダブルで取り付けるよう加工してゆきます。
シフトブロックを取り付けるこの部分の摩耗は有りますが、これなら段差が少ない方です。
シフトロッドが通るこの穴もオーリングをダブルでかけます。(通常はシングルです)ここもシフトロッドが1運転で何度もストロークするので、オイル漏れ頻発の箇所です。
メインリヤのベアリングを打ち込んでからオイルシールを打ち込みます。
天狗の鼻の部分、オイルシールを交換して、クリアランス補正用の大きなワッシャーを取り付けています。天狗の鼻は完全に固定しています。
ケースに組んで完成です。あとは回転試験をするのみです。